東京ヒップを超えてゆけ!
語った人
・神村嘉隆さん
・桑島浩さん
・原冨悠さん
・澁井満さん
・宮本泰成さん

20230501 TOKYO HIP FORTUNE
流儀 ATTITUDE
The Origin of Almost Everything
「東京ヒップはほかの会社とはちょっと違う」。クライアントにかけられる言葉だ。
10年かけて、実行力となって磨かれ、知見となって蓄積されてきた東京ヒップの流儀とは。
校正力に提案力を掛け合わせ、クライアントの課題解決にリーチする仕事。
不確実な時代、誰もが失敗やミスを恐れている。誰もが心あるプロの仕事を求めている。
HISTORY

2009年(平成21年)
3月
・ADKアーツ(現ADKクリエイティブワン)との取引開始
6月
・株式会社ウイラ(現株式会社アレックス)との取引開始
12月
・警視庁捜査⼀課より問い合わせ
2010年(平成22年)
5月
・第⼀回「井上杯」開催
7月
・加茂さんが福利厚⽣案件(ベネフィットワン:本所TGC出向)で地獄をみる
・ダイエーチームからスーパー・エースである池⽥さんが抜ける
澁井さんの元、残されたチームはより⼠気を⾼めた
・東陽町DEPO近くにある場末のスナック「まんぼう」で夜な夜なダイエーチームの飲み会が開かれる
終電を逃した桑島さんはカプセルホテルで、池⽥さんは道路で寝ていた
・出勤前公園で宮本さんがハーゲンダッツを⾷べる→空箱に澁井さんが煙草を捨てる→それをDNP⾚⽻チラシセンターのごみ箱に捨てる→「チラシセンターの作業部屋でタバコを吸った奴がいる!!」とDNPが騒ぎ出す
東京ヒップが疑われたが「ふざけんな」とキレ返して事件は迷宮⼊りに
2011年(平成23年)
3月
・震災避難で神村さんと塩沢さん再会
・下版中だったダイエーチームが3/11の影響で⾚⽻に隔離される
下版中⽌&帰宅不可という状況のため電⾞が動く明け⽅まで飲み続けることに
・徹夜で下版後DNP榎⽊町⼯場を追い出された澁井さんと宮本さんが仕⽅なくファミレスでダイエーチラシの指定紙作りをする
寝不⾜で疲労困憊だったため「事務所(徒歩圏内)に帰って作業する」という発想ができなかったらしい
・ダイエーチームからビッグ・ボスである桑島さんが抜ける
澁井さんの元、残されたチームはさらに⼠気を⾼めた
2012年(平成24年)
4月
・シャディ校正受注
6月
・東京ヒップ10周年
・⻑らく東陽町DEPOを拠点としていたダイエーチームが飯⽥橋事務所に移動
・ダイエーチーム内(というか辻井さん)でヨーデルが流⾏
四六時中かかるヨーデルにさすがの弥⽣さんも苛⽴ちを隠せなくなる
・汐留ルーム開設(東北⽀援)
11月
・⽉刊応⽤物理0校校閲事務局受注
2012年(平成24年)
4月
・JCB加盟店DB事務局受注
「ダンクの」という肩書きを名乗ることになって、今どんな心境ですかと彼らにたずねた。全員が同様に答えた。「何も変わらない」。
会社の名前や見慣れた顔ぶれ、フロアのレイアウトが変わっても、東京ヒップイズムは今ここにあり続ける。それを練り上げる過程の前線に立ち、メンバーへの働きかけや自らのモチベーションを大きく変えてきたリードオフマン5人。
まずは澁井が口を開いた。
ダンクにいてもヒップマインド

澁井 グループの社歴で言うと15年ぐらいになるんで、最初からずっとヒップマインドでやってきたんです。2年前ぐらいですかね、ダンクに移って。組織上は事業推進本部で、基本的にはダンク側を見るけど、ヒップ側も関係あるという立ち位置になった。今回、ヒップがなくなることでダンクだけになって。個人的にはいろんなことを考えて動かす立場だったので、気持ちの整理がつく前にあっという間にこの日が来た。組織をどうする、フロアをどうする、とかをいろいろ考えてせわしなくなってきて、みんなに協力してもらいながら、やっと今は、新体制をどう運用していくかといった踏み込んだフェーズに入ったところです。
澁井 今のフェーズが落ち着いたときに、急に寂しくなるのかもしれないし。本当になくなるんだな、みたいな。ただ、先にダンク側に入っていたので前向きです。後ろ向きな気持ちは何もない。
—— 新体制を率先していく立場。
澁井 そうですね。でも個人的なことを言えば、ヒップの中で育ったし、思い入れはすごく強かった。
—— 一番は、なんですか。
澁井 最初のキャリアで言ったら、前半はダイエーのチラシがメインだったんです。宮本君とか桑島さんとかと昼夜問わず、土日、祝日、関係なしに毎週、ひたすら下版するのに場所を移動して。そういう青春時代の、サークルみたいなノリでしょうか。
—— ヒップイズムをたくさんのお客さんのところに置いてきた功労者といえば池田さん、桑島さん、そして澁井さんでしょうか。今後、対外的にお客さまには新ダンクをどう説明していかれるのでしょう。
澁井 すげえ難しい。
桑島 社長が聞いたら怒るよ、多分(笑)。
澁井 整理がついてないところはあるんですけど、まずはどう立ち回っていくか。基本的なベースは分かってはいるんですけど、自分としてはどうあるべきなのかっていうのは、いろいろ考え中かもしれない。
—— 桑島さんは、いかがですか。
桑島 ダンクになって、ヒップのお客さんに何を言うかってことなら、「変わりません」って言うんじゃないですかね。ダンクと一緒になったから別にサービスが良くなるわけじゃないので。変わらず頑張りますっていう話だと思う。
今、東京ヒップとして、持ち前の新しい・面白い視点で見直し、プロデュースや、全体進行・品質管理の内容に発展させていくことで、ゆるぎない信頼や、お金に換わる価値を積み増している。
ダンクが同じ校正の仕事で大クライアントに規格通りの仕事を納めるという型を強化していった経緯とは好対照とも映る。ヒップとダンクが違うルートから同じ頂上を目指して合流した今、発展期を牽引するメンバーの思いとは。
校正の基礎体力+α=東京ヒップ

桑島 俺、ヒップもダンクも相当長いことやってるんで、経験値もノウハウも、相当たまってるんすよ。それをちゃんと言語化、明文化してアピールしたくて。わかりやすく見える化すると、信用してもらえる。社内のチームで、すごくいいやり方をしているのに、対外アピールが全然弱いのがもったいなくて。池田とか森さんみたいに、コミュ力高い人は口頭でもしゃべれるんですけど、そこまで全員しゃべれなくてもいいので、ノウハウを体系化したものをウェブなり何なりで発信してくとか、体系化していけば、もっと信用が得られていくだろうなって。
桑島 競合を考えても、ニッチな世界ほどいいなと思ってて。意外とメジャーな、よくある仕事をしちゃうと、そういうノウハウはありふれている。でも、ニッチなほどどこにも情報がないんで、誰も分かんないんです。こういうやり方やるんですよっていうのを発信するだけで、そんなふうにやるんだってことで喜ばれるし、差別化になると思うんです。
—— 実感したエピソードはありましたか。
桑島 普通にお客さんと一緒に仕事していて、仕事っぷりを見てもらうだけで喜ばれることはよくあるよね。
澁井 そうですね。
桑島 うまいこと回すね、みたいなね。
澁井 ありますね。
校正視点と顧客視点、二刀流から培ったスキル&マインド
桑島 一番、喜ばれてるじゃん、お客さんに。
宮本 出向していたときにお客さんに言われたのは、ちょっとした気遣いでもそれを普通にできない人がいっぱいいる中でよくやってもらえてる、とか。校正レベルでいうなら、ディレクターチェック、出稿前のチェックでクリティカルなのを拾ったりすると、ディレクターは全員ざるだからこういうのは拾えないっていうので感謝される、とか。ヒップの人の強みって、校正できることもそうなんですけど、校正に取り組んで、さらに仕事の流れや品質管理まで思いを巡らせることができる。一定の精度を保った状態で業務設計もチェックもできるから、どんな不備があるだろう、起こり得るだろうって向き合うことができる。校正で学んだことって、そういう感謝される基礎体力の要素になってる。それは強みだなと。あとは柔軟な姿勢で一生懸命、頑張ることです笑。
—— 絶対的な正確さと、柔軟な対応が揃ったら無敵ですね。

宮本 校正以外でも、例えばエクセルデータ編集とかを扱うにしても、得意な人はいるんですけど。それでも、マクロは組めるけどチェックは雑とか、そんな感じが少なくない。東京ヒップは、完璧なデータをここで決めなきゃいけない、作んなきゃいけないってときに、きっちり決めたものを作れる丁寧さや精度の良さがある。それは、強みだと思いますね。あと、取り組み姿勢もよく言われました。出向先には他社の校正の人も結構呼ばれていたんですけど、中にはいるんです、うちみたいにいろいろやれる人が。でもそういう人はごく少数だし、重宝されるから、がっちり仕事範囲を線引きされて、よその現場に取られたりしていました。うちみたいにあまり線引きしないでフロー全体をサポートする取り組み姿勢は、お金の折り合いをつけるのがすごく難しかったりするんですけど、それでも線引きしない精神で一生懸命取り組んできて、その精度と希少さが重宝されてる。
宮本 言うほど高いわけではないですけど。でも、いるかいないか分かんねえみたいなオーラをずっと出し続けてる人はいっぱいいて。ぼくが出向して最初に思ったのが、世の中の校正マンがこれだとすると、うちの人たちはこれじゃないわ、だったんですよ。
校正の仕事とは。
人が前面に出ないことか。
正しくて当たり前なことか。
既存イメージの枠からはみ出さなければ、その通りかもしれない。
そのイメージに迎合せず、枠を壊さなくとも広げることができるのが東京ヒップだ。
100点目指す校正よりも、120点の満足を渡す付加価値を
原冨 でも世の中の校正のイメージって、100点満点が当たり前っていう感じがあると思うのね。100点取るのが校正の仕事。だから人が前面に立ってこない。うちは100点を超えてく、校正で120点出すところを目指してくっていうのはあったんじゃないかな。でも実際は、校正で100点満点取るのってすごく難しいから、足りない分を他で補足しようっていう、姑息な笑。
澁井 ダンクはね。国井さんとかをはじめ校正に重きを置いてきた。一方ヒップって、いい意味で校正を全体の部分として扱うイメージ。
原冨 イメージね。
澁井 もちろんちゃんとやるんですよ。ちゃんとやるんだけど、マインドとしては校正はプロなら誰でも同じことができるんだという前提。なめてるわけではなくて、ヒップは校正の必要レベルをきっちりカバーしたうえで、それだけじゃない新しいことを、面白いことを、っていう付加価値を考えてきたイメージですね。
原冨 校正で100点満点を目指すぐらいだったら、校正の90点プラスなにか。プラスアルファで20点取って、トータル110点で先方の想像以上のものを返す。もしかしたら100点満点の校正より喜ばれることを模索してる。
澁井 校正って「言われたことをきっちりやります」がイメージ。でもヒップは「全体が良くなるようにいい感じにやります」がモットー。そのトータルパフォーマンスでも信頼されるように意識してきた。普通の校正会社となんか違うよねって言われるのは、そのフットワークの軽さだと思う。相手にいちいち細かく聞くよりも、相手のことを思ってこんな感じでどうですかと提案できる仕事が、今後もはまる仕事のイメージですね。

神村 ちょっと語弊のある言い方になっちゃうんだけど。ダンクは国井さんが中心になってずっとやってたことで、とにかく100%の校正がメイン。なおかつ教わる方もあんまりコミュニケーション力は求められてこなかった。あとはダブルチェックをやるんだというルールがきっちり確立してたんで、それ以外の運用を考えなくなってる節があるんじゃないのかなって思ってて。本当は全体のことを考えながらやるのが一番重宝される。それなのに考えない方向に移っちゃってたんで。
—— 言われた通りの仕事だけではなく、プラスアルファがあればうれしいというニーズにどう働きかけるか。
原冨 制作フロー全体の課題って、校正のパートだけじゃない。校正のパートだけで100点満点取ったところで、前後での課題が解決できなかったら結局、制作物としての点数はトータル100点にはならない。だったら校正の部分は70点でいいから、その前後の50点の部分を70点にしてよとか、そういうところのニーズに応えてく。
桑島 これまで何となく企画と制作とフィニッシュが分業されているようなマインドがあって。そこから外れられないと、遠慮も出るかもしれない。品質管理の目で全体をとらえていく必要がありますね。
やらないことを決める柔軟さ
原冨 もともとはダブルでやってたよ。
桑島 案件によるの、結局。必要があればやったほうがいい。
—— ダブルチェックにかけるマンパワーで、もっと違うこともできるだろうっていう考えもありましたか。
桑島 そんな素晴らしい考えはなかった笑。単純になんか腹立つなと思って。
神村 金だよね。やめちまえ派は桑島さんか池田さんだから。
桑島 ただ、大修正とかぐるぐる繰り返してるケース、これは1人でやるのは絶対やばいでしょうっていうものは、怖いからちょっと見てとかありましたね。
神村 1人でやって事故ってるもんね。
桑島 そこの見極めだよね。
—— ダブルチェックをやらないと決めたことで、それに代わる何かが始まる流れができたのでしょうか。
原冨 やらないっていう選択肢を加えたっていうのは結構でかいんです。校正をもれなくきっちりやるというのは、きちんと順序立てて、工程を網羅していくものだというアンタッチャブルな領域でもあったから。そこから引き算する考え方はあんまりなかった。そこに、選択肢としての幅をひとつ広げたんだろうなとは思います。単純にダブルでやるのをシングルにしたというだけじゃなく、違うやり方をやっていいんだというマインドにリセットした。それは、ヒップ創生期のいろんなことをやってみようという頃から始まってたのかなとも思います。
—— 躊躇なく視野を広げられた。
原冨 ヒップのこのやり方って、あんな感じで立ち上がって、紆余曲折あって。その後、ダンクのやってたものを遠目で見ながらそれをちょっと持ち込んだけど、体系的に何をどういうふうにやってくかっていうところで、やり方までは固まってなかった。
桑島 良くも悪くもね。
「出向」「派遣」「外注」の活かし方
桑島 われわれにないスキルを持った人を入れたいというのは、ここ数年、ずっとあります。
—— そういった人を配置して、さらに全体を見ることのできるディレクション集団へ。
桑島 加藤新社長はそういう組織にしたいんですよね。「お客さんの全ての課題を解決したい」って。
—— 現場を見てこられた皆さま、これをやりたいとか、これが足りないとかはありますか。

原冨 多分、もともとヒップは外部だろうが内部だろうが、社員だろうが社員じゃなかろうが、あんま気にしてないというか。最近、コンプラ的にちゃんとしなきゃいけない部分みたいなところは出てきてるけど、そこにこだわりはあんまりなかったですね。契約形態にこだわっちゃうと、人材の幅も狭まっちゃうし。いる人で何ができるかとか、こういうことができる人間であれば入ってもらおうとか、そこは今後も間口を広げとくことは必要だと感じてます。
桑島 人だよね。それがどういう契約だろうが俺らにないスキルを持ってる人は常に取り入れたい。以前に比べたらそういうネットワークも広がっているから。
桑島 今、編集業務にフォーカスして「伝わる編集」を提案しているんです。たとえば保険系のお客さんのところで、専門的なものを分かりやすくしてほしいと言われる。そういうときに、専門のライターに声を掛けて強化したいとか。
—— 専門性に応えながら、成果物の信頼をハンドリングする。
桑島 そう。全部のフローを部分的に切り分けて右から左に流すことはしない。必ずうちの目を入れた成果物とする。その前提で専門的な人にお願いするからいろんなヒントも得られる。校正もそうですけど、信用される専門家をどれだけネットワークで広げられるか。
たとえばAIが人間と同等の作業をこなす領域を広げたり、日々新技術の登場に驚かされたりするのが当たり前の時代。この選択は正しいだろうかと、誰もが自分の表現や行動に承認を求めている。
東京ヒップはお客さんの課題を解決するために、何ができるのか。「いい感じの」人間らしい提案を標榜するスタンスは、これからの時代にどうフィットしていくのか。
東京ヒップのコミュニケーション
—— そのニーズも高まっていますね。正確さや信頼度に加えて、数値化できない人間らしさの加味された進行や編集が求められている。
宮本 コミュニケーション能力という点でいうと、雰囲気を悪くしないとか、そういうことからでもいいのかな。本当にやろうと思えば、ひたすら机と向き合って終わることだってできる仕事ですし。今いる4階フロアは、元ダンクと元ヒップが同じ所に合併して集まってる状態です。ぶっちゃけ今の時点では元ヒップの仕事をやる島、元ダンクの仕事をやる島で、まだ全然、雰囲気が分かれてまして。それを一つにしていくのに、どうしたらいいんだろうなと。手始めはそこですよね。そこがまず混ざんないと。だって、他のフロアは、同じチーム、同じ仕事をやってるから、所属が何だろうが、一つになってくるんです。4階は、独立して完成しているチームが二つ居合わせたところ。真っ先に、4階をまず一つにしなきゃだなと思います。
—— やりがいありますね。
宮本 稚拙な言葉になるけど、やっぱり雰囲気づくりからかなって思ってます。コミュニケーションのとりやすい雰囲気。何をすればいいのかは難しいんですけど。なくなる前のヒップについても、コミュニケーションづくりは課題になっていました。「人がどんどん減ってって静かになっちゃった」と感じる人が増えて。
—— コロナもありましたね。
宮本 じゃあどうすれば活気が出るのか。活気ってつくろうと思って簡単につくれるものでもないし。自分なりの取り組みはしてみました。形にするのが難しいとしても、目的のあることは、諦めちゃ駄目だと思ってます。
—— 東京ヒップといえば節目ごとのイベントも力が入っていましたね。
宮本 その辺、ビッグボスがいろいろやってくれたので。
原冨 周年? 納会とか。
宮本 まとめてくれてたじゃないですか。
原冨 むちゃくちゃたたかれた笑。
澁井 たたかれた?
原冨 時間かかり過ぎだとか、金使い過ぎだとか。一回ちゃんと会長に怒られた。
澁井 そうなの?
原冨 「やり過ぎだ」っつって。その翌年に「去年は怒り過ぎた」っつって笑。
宮本 適材適所で、得意な子っていて。例えばコロナ禍で子どもの保育園の送迎があって飲み会に行けないという状況で新人が入って。歓迎会をしたいねって雰囲気を田島さんが引き受けてその場でぱっと開いて飲んでくれた。あれって本来、自分がやるべきでしたけど、結果的に彼女がやってくれてよかったなと。得意な人が手を挙げて得意なことをやれるような組織っていいなと感じます。
桑島 それはそうだ。
東京ヒップの売りは「人」であるたくさんの理由
原冨 そこの空気感。イベントっていうか納会とか俺が仕切ってやってたけど、あの空気感は神村さんがつくってると思ってましたけどね、俺はずっと。
—— どんなところで?
原冨 ずっと飲んでるっつうか。
宮本 8時になったらチューハイ開ける音が鳴るところが。
原冨 だんだん時間、早くなって。
桑島 8時じゃない、7時。違う、6時か。
神村 7時です。
桑島 でも5階にいたとき、こっそり飲んでたよ。
原冨 見せびらかしながら飲む。
—— そういう空気をつくってるんですね。
神村 空気が一番、大事だと思ってるんで。他のフロアに行ったとき、やっぱ固いなとか、この島とこの島でコミュニケーションがとれてないなとか、感じることがあります。ヒップもそうなんだけど、あんまり仕事に打ち込まないでよってところが自分はあって。やることをやって、帰れるんだったら帰っていいし、くっちゃべるんだったらくっちゃべっても。くっちゃべれる空気をつくるのが一番いいかなと思ってるんですね。そしたら澁井さんと宮本さんなんか、くっちゃべってると終電逃すぐらい、くっちゃべって。
宮本 めっちゃ真面目な仕事の話です。
原冨 「焼き肉行こうよ」って、こっちはずっと待ってるのに、あっちでずっと2時間くらい話して。
宮本 よくありますよ。
神村 しょっちゅうだよね。
澁井 神村さんが求めてるの、こういう話じゃないですよ。そんなトーンでしゃべられても笑。
神村 それも大事だと思うな。愚痴もそうだし。
原冨 俺は、「だったら牛角、行こうよ」って笑。

桑島 俺も池田と飲み行くと、大体仕事の話でけんかになってる。
澁井 してましたね、よくけんかね。
神村 すぐ泣くしね。
宮本 泣かされてた、池田さん。
澁井 一回、遅刻していいか悪いかでけんかして。
桑島 遅刻は善か悪か。
桑島 あいつ、最近、泣かないんだよね。
澁井 タイプが真逆じゃないっすか。桑島さんはどかっとでかい極論を1個言って、後は任せるっていう人。池田さんは細かいことで不機嫌になるというか、ずうっとねちねち重箱つついて言う人。ぼくはダイエーのときにその中で育った。
—— そして澁井さんができあがった。
澁井 俺は彼らを見ながら、自分だったらこうだけどなって考えたり、いいとこ取りしたり。考えて動くことを学びました。
—— 自分で学んだことにはどんなことが?
澁井 彼らはできる人たちだったんで。2人でやったほうが早いっていう感じだった。最初の頃は信用できる人がわからなかったからかもしれませんが、任せられる人がいなくて、2人が全部決めて、2人が徹夜して、2人が全部やってたんです。とてもじゃないけど俺はそれをまねできないし、俺はもっと周りを使ってやってこうって思った。多分、そこがだいぶ違ったかなと思います。
—— 周りにやってもらうリスクもあるから。
澁井 あります。それは最後、信頼というか、自分を信じる。この人を信じる自分を信じるというか。だからチームのときは、任せられると思ったら任せて、自分が任せてミスったんなら自分の責任だという考えは常に持っていました。だからどんどん任せていく。それにはモチベーションを維持してもらうのが大事だから、自分も変なとこ見せられないぞとなる。一緒に成長しているというスキルやマインドの循環も生まれてました。みんな、やがて社員になったり、他に巣立って活躍していったりというのは、会社の利益にもつながりますし。
—— これからのダンクにどう引き継いでいくかという点についてはいかがですか。
桑島 型は破っていきたい。
—— 目標設定などはありますか。
桑島 それはある。やっています。ただ、あまり具体的じゃないってのが、うちの悪いとこかなと。抽象的なのが多くて。
宮本 この仕事をこなせばそれでクリアとかいうほど分かりやすくないですからね。この人はこういうのが苦手っぽいから、じゃあもっとできるようにするために、この仕事をお願いしてみようかなとか、これを任せてみようかなとか、あんばいを読みながらちょっとずつやる感じです。
—— 人と同じ指標の目標設定やスローガンとかでは行きとどかない。
桑島 シンプルに言うと、うちは人が売りなんです、絶対に。そうすると、ここにいるような人を今後どれだけ量産できるか。その量産が僕の中ではちょっと停滞してる気がしてて、今後、それを増やしたい。多分、ここにいる人間くらいのレベルのメンバーが増えたら絶対仕事が増えると思う。
—— 東京ヒップの東京ヒップらしさに人ありき。ルールやノルマからは生まれなかったでしょう。
澁井 考えて動くとか、いい感じにやるとか、その意味やマインドは確かにヒップにいたから身についたと思うんすけどね。
桑島 校正だけしてるのはつまんないって思えないと駄目な気がすんだよね。校正だけ面白いと思うその先は100点を目指す方向になってしまうから。そこにもう飽きたっていう先に新しい挑戦がある。
澁井 ヒップにはこの人たちのように見本になる人たちがいたんですね。人を見て育ってる環境。ダンクは忠実にやってるルールを見て育ってるかな。
桑島 リーダー陣はこれから人を見て育つ空気をちょっとずつ、つくっていけばいいと思う。そういうのを面白い、やってみたいって、中にいるそういう人をどうやってすくい上げるか。
元ヒップ×元ダンクの融合ポイント
—— リーダー。いかがでしょうか、それを聞いて。
宮本 頑張ります。
原冨 みやもっちゃんは本当、仕上がったよね。
桑島 そう。最初、リーダーになると思わなかった。

宮本 1年目に辞めると思ってたんです。あれ? そんな話でいいんでしたっけ笑。人を育てるって、難しいですよね。資質もありますし。そんな人は早々に引っこ抜かれて出向していったりしますからね。この会社は、これがやりたいって言うと挑戦させてくれることが多いんですよね。自分は入って14年ぐらいたっていますけど、大抵2、3年スパンで部署が変わったり、勤務地が変わったりしていたんです。しかも最初の1年は社内にいて、その後ダイエーチームに入って、「ダイエーチームの仕事じゃないのをしたいです」って言ったら、原冨さんの下に付けてもらって、いろいろ教えてもらって。次、「出向したいです」って言ったら、出向させてくれて。出向先でも、ものすごい人がいたから、さらに今はその人を目標に働くようになった。自分と比べたり目指したりする対象が社内から他社の人間に広がったのはよかったです。この人らと渡り合うにはどうしたらいいだろうっていうふうにもなれたから。そんな、やりたいことをやらせてもらえる環境には、すごく感謝しています。だから、今はそんなやりたがりな人をどう見つけるか。
宮本 いや、違いました。もうちょっとやってけるかな、頑張ってみようかなと思えたきっかけは、やっぱり、池田さん、桑島さんのようなエクセントリックな人がいる中で、澁井さんが中和してくれるっていう構図の中にいたから。ヒップのおかげですよ。
—— 宮本さんによる新生ダンクのチームビルディング、楽しみです。
宮本 難しい部分もあると思いますけどね。既にダンクが完成してるから。4階の合流フロアに来たダンクの人たちは、既に確立された組織とか雰囲気を背負って来てるじゃないですか。本当に合体するには、合う・合わないレベルのトラブルもあるだろうし。でもヒップだけしかいなかったときにはやれなかったこともできるようになると思ってます。
—— きっちりやれていること以外の気付きを与えてあげる。
桑島 自分がされたことを今度はしてあげればいいってことだよね。
宮本 相手を見つつ、アクションの仕方を変えつつ。元ヒップの人たちとダンクの人たち、仕事のスタンスもキャラクター性もちょっと違いますからね。もともとの温度差とかもあるだろうから、仕事のスタンス以外にキャラクター性も踏まえた上で、割り方も考えなきゃいけないなと思って。変わらずにずっと同じというのが一番つまらないと思ってはいたので、合体したのはよかったんです。あるかなしかで言ったら、全然ありだと思ってます。
—— 教育はどんなふうに進めているのでしょうか。
宮本 仕事ベースで言うなら、ある人が面談で「あの人みたいにうまくできると思えないんですよね」って言ってくれたとします。そしたら、やったことないタイプの仕事を「あの人に付いて一緒にこれやってみて」と渡してみたり。
—— 自信を付けてもらうみたいなところから。
宮本 そうですね。まだステップだとこちらもわきまえて、キャラクター性を開花させるぞ、などと気負わずに。
—— キャラが確立されている人とか、スキルのある人ほどセルフイメージが固まりがちなのでしょうか。
原冨 この人すごいな、みたいな人がいるかいないかで、だいぶモチベーションが変わるんだろうなと思ってて。ヒップで言うと、神村さんがなぜかずっと一番偉い席にいて、なんでなんだろう、みたいな。ずっと飲んでんのにな、みたいなとこから笑。
澁井 あっちがきたねえ、こっちがきたねえって、言えるのが。自分の机が一番汚いのはないことにして笑。
—— きょうもこのフロアを掃除してくださってましたよ。
原冨 池田さん、桑島さんとかもそうだし。普通に考えるとどう考えても頭おかしい笑。だけど仕事はやるしな、仕事で比べられたらかなわないしな、みたいな。でも人間性で言ったら……とか、そういうのを見て自信をつけてほしい笑。
神村 森さんも。
原冨 森さんもそうだし。澁井さんとか宮本さんとかを見て、若手が「あの人ら、頭おかしいよね」って。でも、ああいうふうにやんないといけないのかなとか、ああいうふうにやれたらいいなとか。そういうきっかけに自分自身がなってくっていうのに大きな意味がある。そういうところをぼくらの層は目指していくとか、見せていく必要があるよなって気はする。
桑島 リーダーは人を見る仕事だというふうに限定されてしまうと「楽しい?」って思っちゃうんだよね、俺なんか。
宮本 そういう立場って楽しいかって話ですか?。
桑島 うん。自分が楽しかったらいいんだよ。
宮本 人を見るのは、シンプルに大変ですよね。
桑島 でしょう? 本当にしんどいのが想像つく。
宮本 でも勉強になる。
桑島 自分が楽しくなるためには、分身つくっちゃうのが一番手っ取り早いなと思ってるかな。そういう人をどうやって育てるか。
宮本 会社としてはそうしてかなきゃいけないと思うんですよ。自分がいなくなっても業務が回るように、入れ替わりの人をつくっていかなきゃいけない。でも単純に個人としてどう思ってんだって言われたら全然まだまだ。マネジメントをもっとできるようになりたいなと。
桑島 面白そうな仕事が来たら、俺、出向行くわって、行きたいじゃん。
宮本 昔はそのタイプだったんで出向もさせてもらってたんすけど、子どもが生まれてたりすると、出向先で折り合いつけるのがなかなか大変です。
桑島 出向じゃなくてもいいんだけど。社内でもいいんだけど。
宮本 これやりたいって言ったらやらせてもらえる環境をもらえたので、折り合いはつけてきてます。フロアで働いてるみんなが楽しく働けてるのかって聞かれたら分かんないっすけど。それは楽しくなるようにしなきゃいけないなという課題をずっと抱え続けてます。
—— その仕事を宮本さんが楽しんでたらいいんですね。
桑島 そうだと思う。
宮本 後ろ向きなことばっか言ってるのは良くないよなと思います。ネガティブな印象の言葉って聞くだけでも、げんなりすることもありますからね。
—— いつも笑わせてくださったりとかして。私も現場、ご一緒したときはいつもそう思いますね。
仕事に線引きをしない東京ヒップのスタイル。そこから新しい座組みが姿を表してくる。
パーフェクトな校正パートで完結する仕事の顧客満足度を100%と仮定しよう。果たしてその見立ては顧客と共通しているだろうか。顧客の今回の依頼は校正かもしれない。しかし顧客の本来的な課題は、校正の周りを取り巻いているのかもしれない。顧客にはそれを説明できる専門的な前提がそもそもないとしたら。
例えば限りなく100%に近いポテンシャルを持つ校正力を武器に、柔軟な思考力やコミュニケーション力を生かした座組みを提案するとどうだろう。顧客の本来的な課題解決にリーチしたとき、その仕事は顧客満足度120%の結果を導くかもしれない。
ダンクの新たなスタートにはこの総合知が欠かせないはずだ。

原冨 この座談会の第3弾のメンツは女性陣なんです。ぼくらが考える仕事の楽しさとかとは違うけど、彼女たちも楽しそうにやってるなと思う。こちらが押し付けてるわけじゃないのに、どうやったらこの空間で楽しんで仕事できるかを見つけてやってくれてる気がしていて。それについて、次の座談会で話が聞けると面白いな。神村さんとか桑島さんもよく言うけど、仕事する上では楽しく仕事するんだっていう、この空気は結構うちに根付いてるなと思います。
—— 東京ヒップに通底するマインド。
宮本 そうですね。本当に。ぼくも入社1年目のころは意思疎通が図りにくい相手のために自分を抑えて我慢してみたりしていた。でももう全部いい思い出です笑。
仕事やポジションに対して立候補を受け入れるのもそのひとつ。要件にマッチした意欲あるメンバーが手を挙げるから、本人の希望が加味されない状況は起きにくい。業務はリーダーとのコミュニケーションによって補足され、本人の挑戦とリーダーの支援のバランスも取りやすく、専門性を高めることに向かっていきやすい。職場の楽しさは、自ら醸成するのだ。
リーダーたちは、メンバーの希望や生活スタイルを柔軟に仕事に反映することで、その人が思いもしなかったセンスや才能を開花させる風土を、後進に継承しようとしている。楽しんでいる場所に人は集まる。校正の仕事を軽やかに見立て直すことを楽しむ集団からは、これまでにないマインドやアイデアも生まれてくるだろう。新しい仕事を追い求めてきた彼らのさしあたっての大仕事だ。
澁井 嫌だったら辞めてる。基本的にはみんな、校正が好きな人たちが集まっていますから。
原冨 そう。ただ選択肢がなかったのかなって思って。AもあってBもあってCもあって、今Aを選んで、楽しんでやってるんだったらいい。だけど、AしかなくてAは楽しいんだって思い込んでAをやってるんだったら、BとかCとかもちょっと見せてやりたい。選択肢を与えて、その中で選んでほしいなという気はします。
澁井 ダンクは全部のチームが太客の大型案件を持っていて、その中にリーダーがいて、その案件ができる人を育ててきたから、対応できるスタッフは生命線。どうしても囲い込みになっちゃうんですね。それはしようがないとも思う。そういう案件のもとで2年、3年かけて育てた人を他のチームにあげたくないっていう気持ちもあるだろうし。だから、役割の決まった縦割り組織になっている。
—— 限定的な範囲内で積み上げていくキャリアは、一見専門性を高めているようで、実は、その人の想像力や可能性を狭めたり、別の仕事での才能を開花させるチャンスをなくしたりするかもしれない。
澁井 うん。こいつ、すげえいいやつだから、そっちのチームにあげるよなんていうことには、なかなかならない。ヒップの場合は流動的な案件が多いから、マトリックス的な組織になっていて。これが来たら、あいつ、今、空いてるからそれやればいいじゃん、じゃあ、こいつも入れてやればいいじゃん、とかって、新しい座組みがやりやすかった。ここ埋めるのに、あの人とこの人で埋めたらどうかなって、玉突きや交換がしやすかった。
—— 人を中心に据えてそこに仕事を付けていく。斬新で柔軟で、個々の成果を評価しやすいですね。
神村 案件の中で、これしかやらせないってのが多いと、かえって覚えない。だから想像力が広がらないみたいなのがある。本当は案件の中でも同じパートばかりじゃなくて、リーダーがやってることをやってくれとか、そんな大胆な配置をもっとやっていけば人はどんどん変わってくはずなんだ。そこがうまくいっていないのが現状のダンクなんだろうなと思う。それができるようになったら、リーダーになる人とか、他のキャリアに進む人とか、もっと出てくると俺は思う。
澁井 それを俺はちょっと強引にやりだしてて。ヒップ側の出向案件に、この人持ってっちゃうよ、とかって言うんです。そこを抜き取ったら、ここどうすんのとか、すげえハレーションが起きるんですけど。でもそういうことは今までしてこなかったから。下から持ち上げて誰か入れてやるといいんじゃないかっていうことをやりだしました。一回、壊して、人、引っこ抜いて、新しいことをやってみる。

—— アンタッチャブルに手をつけた。
澁井 ダンクに移ってからリーダーたちとも話はしてきたので、リーダーたちはみんな理解してくれるし、協力しようとしてくれる。例えば、Aさんはこんなに優秀だし、今こんな案件があってチャンスだし、Aさんの先のことを考えたら、やってみるのがいいんじゃないかって話を提案します。そのとき同時に、大案件からAさん抜いたら大変だとか、頭抱えるのがダンクだった。気持ちは分かるんです。だから人を抜いて終わりじゃなくて、抜けた穴は、どうすべきか、じゃあBさんを入れて、こうかな、というところまで責任持って関わって新しい配置を考えます。それを理解してもらえるとリーダーたちも必ず共有してくれる。その辺が変わってきてる感じです。
澁井 そこが少しずつ、今、変わってきてると思います。
神村 いいと思いますよ。そうだと思いますよ。
桑島 本当は、いなくなったらどうするんですかって怒るより、ぜひ出してくださいってなりたい。多分、それをやると誰かの仕事がかぶることが心配で、いいですよとは簡単に言えなかった。でも本当は、それをやったらきっと成長するかもという方に目を向けて、やらせたいですって言えるほうが健全だよね。
澁井 リーダーたちは責任感が強くて、すごい真面目なんです。その案件を守っていかなきゃいけないっていう実直な気持ち。その守りが縦割りの中では強くなりがちなので、リーダーも孤立させないように柔軟的な意見を持ち込まないと。これまでは、リーダーとしては、自分に責任があるから、じゃあ、Aさん抜いたら俺がそこの現場やりますよって感じになってたんです。現場に落ちたら落ちたで、リーダーなのに現場ばっかりやってって言われることまで気負っちゃう感じの循環だった。そこを何とか話して理解してもらうんですけど。
桑島 そんなこと言わないでしょう? そもそも、リーダーが現場持つって普通だよね。持たないって誰が決めたんだって思うよね。
澁井 言われないけど気にはなるのかな。現場を持つのはいいんですけど、それで手いっぱいになると、人の管理はどうするのとか、柔軟な運営はできるのとか、そういったことを考えるのが後手になってくるのはあるかなと。リーダーが穴を埋めることをセーブして、下から増やしていくことにも目を向けていけばその心配も変わっていくと思う。ある程度リーダーの手が空いていて余裕が出ていれば、そこは派遣さんで何とか埋められないかとか、採用を進めて新人を増やしてバッファをつくったらどうかとか、考えも生まれてくるから。
—— リーダーも、スタンドプレーですべて引き受けるのではなく、楽しく後継者を育てるコミュニケーションやヒップ流のリーダーシップを変わらず発揮していく。
澁井 うん。かな、とは思うんですけどね。今いるリーダーたちもザ・ダンクって感じからは抜け出していってますね。
神村 これまでは今ある現場を埋めることを何とかしなきゃいけないと思ってきたから。考え方を変える。じゃあ、そこに2人入れて仕事は1個増やしてよみたいなことが言えるんだぐらいの感じを持ってもらえると一番いいんだけどな。
—— 仕事の定義も変わりますね。受けたものを返すだけではなく、違う価値を加えるとか。次のアクションにもつながっていくんでしょうか。
桑島 難しいとこだけどね、結論として。
原冨 これが本当、難しくて。人を増やすと、今度は1人当たりの生産性が落ちて、もっと効率よくやれって言われだすんですよ。そうすると、現場は生産性を上げていくために少数精鋭になってきて、バッファがなくなって、人増やすとまた生産性が落ちて怒られて…みたいな。そこは難しい。バランスが。
澁井 そのバランスを現場で感じ取ってるリーダーが一番大変だと思うんですよ。教育もして、生産性とバッファのバランスも見て、いろんな新しいこと考えて……みたいなことに、リーダーが直面し続けている。自分もリーダーやって長いですけど、そこの理解を一緒に考えていければいいかな。
—— しょうがない、自分がやるしかないみたいに抱えていたマインドから脱却して、そこに対しては信頼がどんどん広がっているから、人を巻き込んでやっていくかというステージですよね。
桑島 好き勝手、言い過ぎだぞって笑。
澁井 俺が一番、大変だったぞって笑。
神村 桑島さんが、専門家を名乗っていれば信頼されるって言ってたでしょう。先方は安心が欲しいっていうところがある。澁井さんが言ってた「いい感じにやります」ってそこに応えるみたいなことなので。俺もまだ言語化してないけど、この間からずっと考えてた。人って安心したい。楽したくて安心したいから、そこを担保してあげるのがうちの役割なのかなと思ってて。
—— そうですね。だれだってミスしたくないし、リスクを侵したくない。そこに寄り添ってあげられるプロ集団ってすごいしかっこいいなと思います。
神村 プロっていう定義をどうするか。
桑島 やったこともないことをプロって言うんじゃないですからね。そこはちゃんと線、引かないと。
神村 みんな制作媒体のプロセスコントロールが、ある程度できるようになってきてるよね。
桑島 そこも結構、自信持ってプロって言っていいんじゃないかな。
神村 ものを作るのって大変で面倒だから、お客さんも、間に入ってる代理店も、うまくいい感じにやってくれる所を求めてるんですよね。企画は出すから、あとはそのアウトプットを確実にやってくれる人に託したいっていう考えだと思うんで。
仕事の新しさは、リスクの対策が図られ、ミスが起こらないことに支えられている。そこに寄り添い続けた集団、東京ヒップ。
その仕事を磨き高めることを楽しもうと変化し続ける魅力的な集団が他のどこにあるだろうか。その価値はこれからどう開花するだろうか。

原冨 対外的な営業の場面では「われわれは品質管理のプロだ」みたいな言い方はしてきた。でも実際、現場のスタッフがそこまで思ってるかというと、そんなではないと思うんで、まだちょっと曖昧。なので、そこをもう少し意識付けしてあげてもいいのかな。実は結構すごいことやってんだよ、とか。メンバーのことを校正者ってくくっちゃうと、自分たちも曖昧だろうから、あなたはカタログに関してはプロだよねとか。カレンダーでもいいし、チラシでもいいし、学校案内でもいい。あとは素読みとか、修正検版とか事務局とかでもいい。得意な分野とかジャンルとかをキャラ付けしてあげて、そこのプロだという自覚を持たせてあげたい。校正の基礎体力の上に、さらに自分の特技というか、得意ジャンルがそれぞれあるはずなんで。長いことやってきて潜在能力が十分なところにキャラ付けしてあげると、みんな、より個性が際立ってきて面白いのかな。
神村 俺はもう今、全然、ここの人たちと違うことをやってるんで、今後はそれをある程度形にしなきゃと思ってます。自分の中ではまた20年前の東京ヒップ立ち上げと同じぐらいの気持ちです。ぽっこちゃんが国民的キャラクターになるように頑張ります。
澁井 ぼくはマネジメントに向き合わなきゃいけないと思ってる。リーダーとは違うマネジメント。第一線で教育して、モチベーション維持もしていくリーダーをバックアップする立場からフォローしていかなきゃいけない。できるだけ現場に近いマネージャーでいたいと思ってます。一番は現場がどう働きやすいか。いろんなことがあるかもしれないんですけど、今いるリーダーたちを信頼してます。正直いえば、会社の上の人間たちと付き合わなきゃいけない立場ですけど、それよりも、下と付き合うことのほうが大事だと思っているかな。上をないがしろにするわけではなくて。
—— ヒップイズムをダンクに持ち込む。
澁井 はい、今のところはまずそれかもしれません。あとは上との関わりの中で、会社と現場の架け橋になる役割。メンバーが納得して、ビジョンに向かっていけるようにする中間の役割なのは分かっている。それができるように試行錯誤ですね。あとはもう、自分が嫌にならなきゃいいなって思ってます。
宮本 これ、心配すべきは澁井さんの上の人たちですよね笑。
澁井 この大役が自分にできるのかどうかっていう不安です。モチベーションがね、もう年なんでね、保守的になってっちゃわないようにしなきゃいけない。
—— でも、ここにいるという存在で、化学反応を起こすこともあるのでは。
澁井 そうなれるといいんですけどね。
宮本 澁井さんの存在、安心感あります。ダイエーチームにいたときからずっといろいろ話を聞いてもらって、相談に乗ってもらって。だから、リーダー層は頑張ると思いますよ。
澁井 とにかく俺、上から嫌われてもいいから、リーダーからは嫌われたくないと思ってますよ。
宮本 私は一言で。今までにない勢いが出せるといいなと思います。せっかくヒップって名前がなくなったんで。ヒップの名前がなくなったってヒップのスタッフは全員いるわけで。一番初めに桑島さんがダンクになっても自分は変わらないって言ってましたけど、そのとおりだと自分も思ってて。他社から見たヒップの良さは、人がいる以上、残り続けてる。絶対に。名前がなくなったからってなくなるものではないと思うので、それがダンクと混ざったことで、ダンクに今までなかった勢いみたいなのが出せると理想。今日、話してて、質問いただいて答えて、答えた内容を後で時間差で考えたりしてたんですけど、めっちゃ難しいこと言ってる気がする笑。
桑島 質問が、核心突いてくるし。
宮本 質問もそうなんですけど、なんかこう、やらなきゃいけないこと。
原冨 芯、食ってくる。
宮本 質問に対して真剣に答えた結果なんですけど、答えた発言が、確かにって自分で思う一方で、これ、めっちゃ頑張んなきゃなって思わされたんで。いい勉強になりました。
桑島 俺は考えたけどないんだよな。加藤さんを男にするかって思ったんですけど。そんな気ねえなと笑。いい意味で、せっかく一社化したんで。人がぐるぐる循環する会社にしたい。循環しないと人は成長しないんじゃないかと思うんです。1カ所にずっといるとなかなか難しい。それをするには、リーダー級をあと何人増やせるか。当然サービスも良くしてかなきゃいけないんですけど。個人的にいうと、ウェブの販促が成果も出始めていて、それを専属でやりたいぐらいですけど、なかなか。それだけは駄目だって怒られそう。だから、澁井さんと宮本さんと協力して。

宮本 はい。思ったんですけどウェブ販促、面白そうですよね。
桑島 やろうよ。
宮本 こういう話、振ってくれるのもありがたいですよね。
桑島 販促、面白い。ウェブの知識とかよりむしろ文章力とかのほうが全然重要だったりする。
神村 ぽっこちゃんもやろうよ。
宮本 ヒップからの卒業ってことですよね。ダンクとの合併じゃなくて。ヒップって名前に頼らなくても、みんなやっていけるようになったっていう。うまいこと落としましたね。
原冨 だってもう、ずっと考えてたからね。
(2023年5月9日 株式会社東京ヒップ(現ダンク)8F応接室にて収録)
ー言録・井上弘治ー
「現場の仕事は当然現場の責任である。 責任という緊張感を客観的に眺めるもう一人の自身を創造することも大切だ」
―――【2016:腑(ふ)】より

「ただ「危機だ危機だ」と騒ぎ立てても意味がない。現状を見極め、それにどう対処していくのかという分析と実現がなければならないと思う」
―――【2020:評(ひょう)】より
「浮遊感を感じながらそれでも現実ときちんと繋がっている状態。繋ぎとめておくためにはやはり知識と教養とそれに裏打ちされた思考力を養う必要がある」
―――【2021:浮(ふ)】より